トリプタン製剤のまとめ

片頭痛の特徴

片頭痛の診断に使われるスコアとしてPOUNDスコアがあります。

PPulsatile quality(拍動性)
O:duration 4-72 hours(4-72時間持続)
UUnirateral location(片側性)
NNausea/vomit(悪心嘔吐)
D : Disabling intensity(日常生活に支障あり)

5項目のうち、4項目以上当てはまれば片頭痛の可能性が高いとされています。

 片頭痛は20~40歳台の女性に多く、頭の片側がズキンズキンと痛む発作が、月に1~2回程度繰り返され日常生活に支障をきたす疾患です。発作時は光や音に敏感になり、吐き気・嘔吐を伴います。ストレス、ホルモン変化、天候、空腹などが片頭痛を誘因となります。

 発作の前に前兆症状が起こることがあります。代表的な前兆症状は閃輝暗点で、視野の一部にギザギザとした歯車のような光が現れます。このような前兆のある片頭痛は全体の30%であり、前兆を伴わないことの方が多いことに注意しましょう。

片頭痛のメカニズム

 片頭痛の機序は明らかになっていませんが、いくつかの説が提唱されており、中でも三叉神経血管説が有力です。

三叉神経血管説

何らかの刺激によって三叉神経終末から神経ペプチド(CGRPなど)が放出される
→血管拡張と神経原性炎症が起こる
→疼痛シグナルが中枢へと伝達される
★カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide; CGRP)

トリプタン製剤の作用機序

トリプタン製剤は5-HT1B/1D受容体作動薬です。

脳血管平滑筋5-HT1B受容体を刺激→血管を収縮
三叉神経終末5-HT1D受容体を刺激→神経ペプチドの放出を抑制

することで片頭痛発作を抑制します。

トリプタン製剤の特徴

5種類のトリプタン製剤の経口薬の特徴を簡単にまとめました。

TmaxとT1/2に違いがあり、
イミグラン、ゾーミッグ、マクサルト:短時間作用型
アマージ、(レルパックス):短時間作用型
として使用されます。
アマージは4時間以上他は2時間以上間隔をあければ追加投与することができます。
基本は1回1錠ですが、効果不十分な場合、次回の発作時から2錠服用することができるものがあります。

監査のポイント

マクサルトとインデラルは併用禁忌

 マクサルト(リザトリプタン)と片頭痛発作予防薬のインデラル(プロプラノロール)は両方ともA型モノアミン酸化酵素(MAO-A)により代謝されます。併用することで、代謝が競合的に阻害され、両剤の作用が増強される可能性があります。ちなみに、インデラルと同じβ遮断薬で片頭痛の予防の効果があるとされるセロケン(メトプロロール)は併用可能です。ただし、こちらは保険適応外です。

脳心血管疾患に禁忌

トリプタン製剤は5-HT1B受容体を刺激による血管収縮作用があるため、
・心筋梗塞の既往、虚血性心疾患、異型狭心症
・脳血管障害や一過性脳虚血性発作の既往
・末梢血管障害
・コントロールされていない高血圧症
では禁忌となっています。

MAO阻害薬と併用禁忌のものあり

 イミグラン、ゾーミッグ、マクサルトの3剤はモノアミン酸化酵素MAOで代謝されるため、MAO阻害剤と併用禁忌です。MAO阻害剤を服用していた場合は、中止後2週間以上あけなければなりません。
 代表的なMAO阻害剤はパーキンソン病治療薬のエフピー(セレギリン)、アジレクト(ラサギリン)、エクフィナ(ラサフィナミド)です。好発年齢が片頭痛は20-40歳台 、パーキンソン病は50-60歳以降であることを考えると、トリプタン製剤との併用はレアケースであるかもしれませんが、注意しましょう。

エルゴタミン製剤、異なる種類のトリプタン製剤は同日に併用不可

24時間以上あけて使用することを確認しましょう。

服薬指導のポイント

服用タイミングは発作早期が効果的

 トリプタン製剤は片頭痛発作の早期(発症より1時間くらいまで)に使用することで、最大限の効果が得られます。早期の服用を躊躇し、頭痛がひどくなるまで待ってから服用すると効果が著しく落ちてしまうことがあります。また、発作が起きる前の予兆期・前兆期での服用も、効果が得られない可能性があるため推奨されません。

薬が高くてもったいない、副作用がこわいなどの理由で頭痛がひどくなるまで待ってから服用しているかもしれません。よく相談に乗ってあげられると良いですね。

急性期治療薬の服用は月10回まで

 急性期治療薬を連日服用すると薬が効かなくなり慢性化することがあります。この状態を薬剤の使用過多による頭痛(medication overuse headache; MOH)と言います。MOHを防ぐため、急性期治療薬の使用頻度が月10日以内か確認しましょう。急性期治療薬を連日服用している場合は、予防薬の服用も検討する必要があります。

参考資料

頭痛の診療ガイドライン2021
治療薬ハンドブック2022
薬がみえるvol.1

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